高次脳機能障害とは|家族が知る制度と愛媛の相談先
脳梗塞で入院していた家族が、退院して家に戻ってきた。歩けるし、話もできる。なのに、さっき言ったことを覚えていない。前はなかったのに、ちょっとしたことで怒り出す。仕事に戻ったけれど、段取りがつかずに困っているらしい。
「年のせいかな」「疲れているだけかな」と様子を見ているうちに、ご家族のほうが先にくたびれてしまう。。。そういう場面、あると思います。
こうした変化の背景に、高次脳機能障害があることがあります。外から分かりにくく、ご家族が一人で抱え込みやすい。大将は、ここがいちばん気がかりなんです。
今日は、高次脳機能障害とはどういうものか、使える制度の入口、令和8年4月に始まった新しい法律、そして愛媛・松山の相談先を、公的な情報をもとに整理します。先にひとつだけ。診断や治療の判断は、必ず主治医にご相談ください。
高次脳機能障害とは、どういう状態か
松山市の説明では、高次脳機能障害は「脳の病気や交通事故などで脳に損傷を受けたことにより、思考・記憶・言語・注意・行為などの脳機能の一部に障害が起き、複雑な情報処理ができにくくなった状態」とされています。そして、外見からは分かりにくい「隠れた障害」だとも書かれています。
原因は、脳の病気や、交通事故などによるけがです。国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害情報・支援センターは、主な症状として次のような例を挙げています。
| 主な症状 | 日常で見られる例 | 対応の工夫(松山市のページより要約) |
|---|---|---|
| 記憶障害 | 物の置き場所を忘れる。新しいできごとを覚えられない | メモやアラーム、置き場所を決めておく |
| 注意障害 | ぼんやりしていて、ミスが多い。ふたつのことを同時に行うと混乱する | 順序立てて一つずつ。静かな環境、休憩 |
| 遂行機能障害 | 自分で計画を立ててものごとを実行することができない | 目で見て分かる手順書、全体の見通しを共有する |
| 社会的行動障害 | 興奮する。思い通りにならないと、大声を出す | 気持ちを落ち着ける場所、役割を決める |
(出典: 国立障害者リハビリテーションセンター「高次脳機能障害を理解する」、松山市「『高次脳機能障害』に関する情報」。2026年9月時点)
ここは、大将からいちばんお伝えしたいところです。これらは本人の性格や努力不足ではなく、脳の損傷によって起きている症状です。「何度言うたら分かるん」と責めても、本人もご家族も、しんどくなるだけになりがちです。
表の症状に当てはまるからといって、高次脳機能障害だと決まるわけではありません。気になる変化があれば、まずは主治医(入院していた病院など)に、家庭での様子を具体的に伝えて相談してください。
使える制度は、年齢と原因で入口が変わります
高次脳機能障害のある方とご家族が使える制度は、主に3つあります。障害者手帳、障害福祉サービス、介護保険です。ここがちょっとややこしい。年齢と「何が原因か」で、使える入口が変わるんです。
障害者手帳と障害福祉サービス
国立障害者リハビリテーションセンターによると、高次脳機能障害によって日常生活や社会生活に制約があると診断されれば、「器質性精神障害」として精神障害者保健福祉手帳の申請対象になります。診断書は精神科医でなくても、リハビリテーション医などが作成できるとされています。手足の麻痺や言語の障害があり、基準に当てはまる場合は、身体障害者手帳の対象にもなります。
松山市の案内では、精神障害者保健福祉手帳は初診から6か月以上たってから申請でき、等級は1級から3級です。
また、器質性精神障害として位置づけられた高次脳機能障害は、手帳のほか、自立支援医療受給者証(精神通院医療)や医師の診断書があれば、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの支給申請ができるとされています。
介護保険
介護保険のサービスは、65歳以上の方は、原因を問わず介護が必要と認定されれば使えます。
40歳から64歳の方は、特定疾病(松山市の説明では「老化が原因とされる病気」)によって介護が必要になった場合に限られます。国立障害者リハビリテーションセンターは、その例として脳血管疾患を挙げています。脳の血管の病気が原因なら、40〜64歳でも対象になり得ます。
一方で、松山市は「40歳以上65歳未満の第2号被保険者について、交通事故が原因で介護が必要となった場合は、介護保険のサービスは利用できません」と案内しています。この場合は、障害者手帳や障害福祉サービスの側から考えることになります。
| 状況 | 主な入口 |
|---|---|
| 65歳以上 | 介護保険(原因を問わず) |
| 40〜64歳で、脳血管疾患など特定疾病が原因 | 介護保険の対象になり得る |
| 40〜64歳で、交通事故が原因 | 介護保険は対象外。障害者手帳・障害福祉サービス |
(出典: 松山市「介護保険の資格」「第三者行為求償」、国立障害者リハビリテーションセンター「福祉サービスについて知りたい」。2026年9月時点)
どれが使えるかは、年齢・原因・症状・生活の状況によって一人ひとり違います。迷ったら、次の章の相談先で「どの制度から当たればいいですか」と聞くところから始める。それで大丈夫です。要介護認定の申請の流れは松山で介護保険を申請するには?窓口と流れにまとめています。
令和8年4月から「高次脳機能障害者支援法」が始まりました
もう一つ、大将がどうしてもお伝えしたかった話です。
高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)が令和7年12月に成立・公布され、令和8年4月1日から施行されています。厚生労働省の通知によると、この法律は、高次脳機能障害の特性への理解が必ずしも十分でないことなどから、適切な支援を受けられずに困っている状況があることを踏まえてつくられたものです。
通知に示された内容のうち、ご家族に関わる主なものは次のとおりです。
- 支援は、医療機関での医療から、地域での生活支援、社会参加の支援まで切れ目なく行われなければならない
- 国と地方公共団体は、家族その他の関係者に対して、相談、情報の提供や助言、家族どうしが支え合う活動の支援などを行うよう努める
- 都道府県知事は、本人や家族への専門的な相談・助言などを行う高次脳機能障害者支援センターを指定することができる
- 事業主は、本人やその家族の雇用の継続等に配慮するよう努める
法律ができても、暮らしがすぐ変わるわけではありません。がしかし、「家族も支援の対象」と法律に書かれた。これは相談に行くときの後ろ盾になると大将は感じています。
仕事との両立については介護離職を考える前に知ってほしい制度と相談先をご覧ください。
松山では、どうなっているか
愛媛県は、松山リハビリテーション病院(松山市高井町)の高次脳機能障害支援室を支援拠点機関としています。ほかに県内6か所の相談支援協力機関があり、松山市に近いところでは伊予病院(伊予市)が含まれています。
松山市の窓口もあわせて、目的別に並べるとこうなります。
| こんなとき | 相談先 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 高次脳機能障害について専門的に相談したい | 松山リハビリテーション病院 高次脳機能障害支援室(県の支援拠点機関) | 089-975-7427(直通) |
| 伊予市の協力機関に相談したい | 伊予病院 医療福祉支援センター | 089-983-6877 |
| 松山市の窓口に相談したい | 松山市 保健予防課(精神保健担当) | 089-911-1816 |
| 同じ立場の家族とつながりたい | 愛媛高次脳機能障がい者を支援する会「あい」 | 090-6284-5482 |
| 障害福祉サービスを使いたい | 松山市 障がい福祉課 | 089-948-6719 |
| 介護保険の要介護認定を申請したい | 松山市 介護保険課(要介護認定申請担当) | 089-948-6841・6926 |
| どこに相談していいか分からない | 地域包括支援センター | 基幹型 089-948-6784 |
(出典: 愛媛県「高次脳機能障害支援普及事業について」(2026年6月16日更新)、松山市「『高次脳機能障害』に関する情報」(2026年5月13日更新)、松山市 障がい福祉課・介護保険課の各ページ。2026年9月時点)
精神障害者保健福祉手帳の申請窓口も障がい福祉課です(担当の電話番号は市のページ間で記載が異なるため、ここでは載せていません)。
在宅での介護が続いて、ご家族の負担が大きくなってきたときの考え方は在宅介護の限界、どこで施設を考えるかにまとめています。
大将は、こう考えています
大将が介護を志して働き始めたのは、グループホームでした。認知症について学ぶなかで、言葉で意思を伝えるのが苦手な方の思いを捉えるには、言葉以外のサインを受け止め、受け入れることが第一歩だと理解しました。昔のブログにも「相手の声無きサインを感じて、次の動きに繋げる」ことを書いてきました。
場面は違いますが、外から見えにくい困りごとほど、同じ姿勢が役に立つと感じています。「なんで?」と1回立ち止まって、奥にある困りごとを探す。ただ、それをご家族だけで背負うのは重い。だから専門の相談先を頼ってほしいんです。
まとめ
持ち帰っていただきたいのは、3つです。
- 高次脳機能障害は、外から見えにくい障害です。本人の努力不足ではありません
- 制度の入口は、年齢と原因で変わります。40〜64歳で交通事故が原因なら、介護保険ではなく手帳や障害福祉サービスが入口です
- 愛媛には専門の相談先があります。松山リハビリテーション病院の高次脳機能障害支援室(089-975-7427)、または松山市の保健予防課・地域包括支援センターへ
令和8年4月に始まった支援法では、家族も支援の対象として位置づけられました。一人で抱え込まんと、まずは電話1本から。それで十分です。
大将が掲げている「快」という一文字は、こちらが与えるものではなく、受け取った方の反応から生まれるもの。してあげているのではなく、させていただいている。見えにくい困りごとほど、ご本人とご家族の声を先に聞く。その順番を大事にしていきたいと思っています♪
介護保険のサービスを使う段階になり、松山近郊でデイサービスや居宅介護(ケアマネジャー)をお探しでしたら、見学のご相談をどうぞ。
この記事の出典
- 松山市「『高次脳機能障害』に関する情報」 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/iryo/hokenyobo/kokoro/koujinoukinou.html
- 愛媛県「高次脳機能障害支援普及事業について」 https://www.pref.ehime.jp/page/17774.html
- 国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター「高次脳機能障害を理解する」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/rikai/
- 同「福祉サービスについて知りたい」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/how05/
- 同「高次脳機能障害支援に関する制度」 https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/seido/
- 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部長通知「『高次脳機能障害者支援法』の公布について」(令和7年12月24日) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001621597.pdf
- 松山市「精神障害者保健福祉手帳」 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/fukushi/shogai/techo/techou.html
- 松山市「介護保険の資格」 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kaigohoken/kaigohoken/kanyu/shikaku.html
- 松山市「第三者行為求償(交通事故等にあったら)」 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kaigohoken/kaigohoken/sonohoka/daisansya_kyusyo.html
- 松山市 障がい福祉課 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/kakukaichiran/hokenfukusibu/syougaifukusika.html
- 松山市 介護保険課 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/kakukaichiran/hokenfukusibu/kaigohokentoppu.html
- 松山市「地域包括支援センター」 https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kaigohoken/koureisyashien/shien_center/houkatsu.html