不安

認知症の親との接し方|家族が疲れないための基本

同じ話を何度も聞かされて、つい「さっきも言うたやろ」と返してしまう。財布がないと言われ、家族が疑われる。言い返したあとで、自分がいやになる。

言うてしもうたあとが、いちばんしんどい。。。

大将は、そういう気持ちを責める気にはなれません。毎日のことですから。こういう場面の「正解」を一つだけお渡しすることは、大将にもできません。ただ、国や松山市の資料には、接し方の基本がちゃんとまとめられています。今日は、その基本と、家族が一人で抱え込まないための仕組みの話を。

9月は、法律で定められた「認知症月間」です(2024年1月施行の認知症基本法による)。家族で接し方を話してみる、ええきっかけにしていただけたらと思います。

いちばん不安なのは、本人かもしれません

厚生労働省は「認知症の人と接するときの心がまえ」というページで、認知症サポーター養成講座の標準教材を引きながら、次のように説明しています。

認知症の人は何もわからないのではなく、誰よりも一番心配なのも、苦しいのも、悲しいのも本人です。

同じページには、「私は忘れていない!」という強い否定についての説明もあります。厚生労働省の説明では、それは「私が認知症だなんて!!というやり場のない怒りや悲しみや不安から、自分の心を守るための自衛反応」とされています。

否定されるほど、家族は説明に力が入ります。当然です。がしかし、本人の側から見ると、説明されるほど追い詰められることがある。この見方を知っておくだけで、言葉の選び方は変わってくると大将は感じています。

同じページは「さりげなく、自然に、それが一番の援助です」と結んでいます。

接するときの「3つのない」と7つのポイント

松山市が作っている認知症ケアパス「まつやまオレンジぶっく」(令和8年7月改訂版)には、「認知症の人と接するときに大切なこと」という章があります。出典は全国キャラバンメイト連絡協議会の教材です。そこでは、対応の心得を3つの「ない」にまとめています。

  1. 驚かせない
  2. 急がせない
  3. 自尊心を傷つけない

あわせて「具体的な対応の7つのポイント」も載っています。まちで声をかける場面を想定した内容ですが、家庭にも置き換えられます。

冊子のポイント 家庭で置き換えるなら(例)
まずは見守る 失敗しそうでも、すぐに手や口を出さず少し待つ
余裕を持って対応する 家族の焦りは伝わる。深呼吸してから話す
声をかけるときは1人で 家族が何人もで一度に問い詰めない
後ろから声をかけない 正面に回り、視野に入ってから話しかける
相手に目線を合わせてやさしい口調で 座っている人には、しゃがんで目の高さを合わせる
おだやかに、はっきりした話し方で ゆっくり、はっきり。聞き慣れた方言のままでよい
相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する 一度に一つずつ聞く。答えを急かさない

(出典: 松山市「松山市版認知症ケアパス(まつやまオレンジぶっく)」令和8年7月改訂版「認知症の人と接するときに大切なこと」。右列は冊子の内容を家庭向けに言い換えた例です)

冊子には、話し方について「その土地の方言でコミュニケーションをとることも大切です」とも書かれています。大将、ここは読んでうれしくなりました♪ 松山の親御さんなら、松山の言葉のままでええ、ということです。

ひとつ、お断りを。これは「こうすれば症状が落ち着く」という方法ではありません。本人を追い詰めないための、関わる側の心がまえです。気になる症状があるときは、かかりつけ医や地域包括支援センターにご相談ください。

「いらん」と言われたときの考え方

食事に誘っても「いらん」。お風呂に誘っても「はいらん」。家族が一番困るのは、こうした拒否かもしれません。

無理にさせるべきか、本人の言うとおりにしてよいのか。これは介護の仕事をしていても、同じように迷うところです。

大将は以前ブログで、この迷いについて持論を書いたことがあります。そのとき基準にしていたのが、「なんで?」と一度掘って考えること。

たとえば夕食を断る理由には、次のようなものが考えられます。

  • 昼に好物をたくさん食べて、お腹がすいていない
  • 体調がよくない
  • その場にいる人や、その料理が苦手
  • 気持ちに不安を抱えている

お腹がいっぱいなら、そんな日もある。一方で、不安や苦手が理由なら、声のかけ方や時間、場所を変えてみる余地があります。

掘ってみると、問題は「食べない」ことではなく、「食べる手助けがうまくできていない」ことだった。そう見えてくることもあります。

もうひとつ、大将が持論として書いてきたのが、「やらない」のか「やれない」のかを分ける見方です。やらないのは本人の選択(自己決定)、やれないのは手助けが要るサイン。この区別があるだけで、家族の気持ちも少し楽になると思うんです。

体調の変化や、食事・水分がとれない状態が続くときは、家庭で判断せず、かかりつけ医や担当のケアマネジャーに早めにご相談ください。

家族が倒れないために、頼れる仕組み

接し方を知っていても、毎日となれば家族は疲れます。大将は認知症サポーター養成講座の講師をしてきた中で、「介護は突然始まる」「介護は終わりの見えないマラソン」とお伝えしてきました。

講座のテキストでは、家族の気持ちは「戸惑い・否定」「混乱・怒り・拒絶」「割り切り」「受容」と移り変わっていくと説明されています。怒りや拒絶を感じる段階がある。それを知っておくだけでも、自分を責める気持ちは少し軽くなるかもしれません。

マラソンを一人で走り切ろうとせんこと。大切なのは、家族だけで抱え込まないことです。松山市のケアパスは、認知症の進行に合わせて使えるサービスや相談先を一覧にしています。家族の負担という視点で整理すると、次のようになります。

家族を支える4つの仕組み。相談する、仲間とつながる、日中に通う、泊まる・住まいを考える

家族の困りごと 頼れる仕組み 内容(公的資料の説明から)
誰かに相談したい 地域包括支援センター 市が委託して運営する公的な相談窓口。松山市内に13か所とサブセンター2か所
同じ立場の人と話したい 認知症の人と家族の会 愛媛県支部 家族や介護者が集まる「つどい」、電話相談(月・火・木・金 10:00〜16:00)
気軽に集える場がほしい 認知症カフェ 認知症の人や家族、地域の人、専門職が参加できる「集いの場」
日中、家族が休む時間がほしい デイサービス / 認知症対応型通所介護 施設に通い、食事や入浴などの支援を日帰りで受ける。家族の介護の負担軽減も目的の一つ
数日、家を空けたい ショートステイ(短期入所) 施設に短期間入所するサービス
在宅が難しくなってきた グループホーム 認知症の人が5〜9人の少人数で、介護スタッフとともに共同生活を送る(要支援2以上)

(出典: 松山市「松山市版認知症ケアパス」目的別支援内容・サービスの例、厚生労働省「介護サービス情報公表システム」。2026年9月時点)

介護保険のサービスを使うには、要介護(要支援)認定が必要です。申請の流れは松山で介護保険を申請するには?窓口と流れに、在宅を続けるか施設を考えるかの目安は在宅介護の限界、どこで施設を考えるかにまとめています。

松山では、どうなっているか

松山市の認知症ケアパス「まつやまオレンジぶっく」は、令和8年7月に改訂されました。「接するときに大切なこと」の章だけを市のページでPDFで読めるほか、冊子は市役所や各支所、地域包括支援センターなどに置かれています。

接し方を学ぶ場としては、認知症サポーター養成講座があります。冊子によると、松山市は10名以上の企業・団体等に講師を派遣しているほか、個人対象の講座を年1回開催しています。日時は市の長寿福祉課(089-948-6949)に問い合わせる形です。

家族の相談先としては、次の窓口が冊子に載っています。

  • 認知症の人と家族の会 愛媛県支部: 089-923-3760(月・火・木・金 10:00〜16:00。年末年始・祝日を除く)
  • 認知症地域支援推進員: 各地域包括支援センターに配置。問い合わせは各センターまたは長寿福祉課(089-948-6949)
  • 認知症カフェ: 市内の一覧は松山市の公式サイト(令和8年6月現在の版)

(出典: 松山市「松山市版認知症ケアパス」令和8年7月改訂版、同「松山市内の認知症カフェ情報」。2026年9月時点)

まとめ

  • 厚生労働省の資料では、いちばん不安を感じているのは本人だと説明されています
  • 接し方の心得は「驚かせない・急がせない・自尊心を傷つけない」の3つの「ない」
  • 拒否されたときは、「なぜ」を一度考え、「やらない」と「やれない」を分けてみる
  • 家族だけで抱え込まず、地域包括支援センター・家族の会・通いや泊まりのサービスを頼る

グループホームの見学で何を見ればよいかは、グループホーム見学、大将が見てほしい5つの点にまとめています。

大将が掲げる「快」という一文字は、もとをたどれば、グループホームで認知症ケアを学んでいた頃に研修の講師の方々が口をそろえて言われていた言葉です。言葉での意思表示が苦手になった方の思いは、しぐさや表情を受け止め、受け入れ、かたちにしていくことでしか受け取れない。今日の「3つのない」も、根っこは同じところにあると大将は感じています。

「快」は、こちらが与えるものではなく、受け取った方の反応から生まれるもの。だから、してあげているのではなく、させていただいている。ご家族が少し肩の力を抜けるように、その姿勢を続けていくこと。それが大将の約束です♪

松山近郊でグループホーム・デイサービス・居宅介護をお探しでしたら、見学のご相談をどうぞ。まだ決めきれていない段階でも、遠慮なく。

この記事の出典

まずは、見学にお越しください。

どの施設が合うのか、費用はどれくらいか。決めていない段階のご相談で結構です。お電話でもフォームでもお受けします。

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