地域

介護が必要な家族の防災|松山の避難支援制度

9月1日は防災の日。松山もこれから秋の台風シーズンに入ります。

雨の音が強くなってきた夜、テレビの下に避難の情報が流れる。そのとき頭に浮かぶのは、隣の部屋にいる親御さんのことだと思います。歩くのに時間がかかる。夜は特に足元が危ない。車椅子で、あの坂を下りていけるのか。。。「この人を連れて、本当に逃げられるんやろか」。

避難は、その場の頑張りではどうにもならない場面があります。だからこそ、決めておけることを先に決めておく。松山市には、そのための仕組みが用意されています。

避難の合図は「高齢者等避難」から始まります

まず、いつ動くか。ここが決まらないと、あとの段取りが全部後ろにずれます。国は避難情報を5段階の警戒レベルで出しています。

警戒レベル 情報の名称 とる行動
3 高齢者等避難 高齢者や障がいのある方など、避難に時間がかかる方が避難を始める
4 避難指示 危険な場所から全員が立退き避難する
5 緊急安全確保 命の危険。すでに安全な避難が難しく、その場で身の安全を確保する

内閣府「避難情報に関するガイドライン」より

大事なのは、レベル3の名前が「高齢者等避難」だということ。レベル4の「避難指示」で全員が動くのに対し、その一段手前に、時間がかかる人のための合図が別に用意されている。介護が必要なご家族がいる家では、レベル3を自分たちの避難の合図と考えておくと動きやすいと思います。

「まだ大丈夫やろ」と一段待つと、いちばん動きにくい人が、いちばん条件の悪い時間帯に外へ出ることになります。レベル3で動く。これだけでも決めておく価値があります。

松山市の「避難行動要支援者名簿」は、申し込みが要ります

松山市には、災害のときに自力での避難が難しい方を地域で支えるための避難行動要支援者支援制度があります。消防局・民生児童委員・自主防災組織などと連絡を取り合い、市の言葉では「一番身近な地域で助け合う仕組み作り」を目的とした制度です。名簿に載ることで、地域の支え手に「この家に手助けの要る方がいる」と伝わる形になります。

対象になる方と、申し込みの窓口は次のとおりです。

対象となる方 窓口
独居またはねたきり高齢者 長寿福祉課 089-948-6408
要介護認定3〜5に該当する人 長寿福祉課 089-948-6408
身体に障がいのある人(身体障害者手帳1〜3級) 障がい福祉課 089-948-6353
知的障がいのある人(療育手帳所持者) 障がい福祉課 089-948-6353
精神に障がいのある人(精神障害者保健福祉手帳所持者) 障がい福祉課 089-948-6353
難病患者(特定医療費(指定難病)受給者証所持者) 障がい福祉課 089-948-6353
小児慢性特定疾病児童等 すくすく支援課 089-911-1811

松山市の公式ページ(2026年5月26日更新)より。施設に入所している方は対象から除かれます

見落とされやすいのが、ここです。松山市の制度は「事前に登録の申し込みが必要」とされています。要介護認定を受けているからといって、自動で名簿に載るわけではありません。「うちはもう登録されとるはず」という思い込みが、いちばん惜しいパターンかもしれません。

この申込書には、もう一つの顔があります。様式の名前はそのまま「松山市避難行動要支援者名簿登録申込書兼個別避難計画書」。個別避難計画——市の説明では「避難場所や避難経路、誰が避難を支援するのか、避難する際の注意点など、災害時に必要なことをあらかじめ決めておくもの」を、登録と一緒に書く形です。令和3年の災害対策基本法の改正で法律に位置づけられ、市町村の努力義務とされたものです。

ご本人やご家族だけで書くのが難しいときは、福祉の専門職の協力を得られる場合があるので担当課に相談を、と市は案内しています。ケアマネジャーさんは、その人の体の状況と生活のリズムをいちばん具体的に知っている専門職。困ったら、まず持ちかけてよい相手です。

大将は昔から、段取りの手前の準備を「仕込み」と呼んできました。仕込みが済んでいる日は、現場が慌てません。避難計画も同じだと思うんです。

「福祉避難所」は、いきなり行く場所ではありません

誤解が多いので、はっきり書きます。松山市には指定福祉避難所が108カ所あります(令和8年4月1日現在)。特別養護老人ホーム、老人保健施設、有料老人ホーム、グループホームなど市内の福祉施設が名を連ねています。ただし市の説明はこうです。指定福祉避難所とは「指定避難所での生活に特別な配慮が必要と判断された方が、指定避難所から移り避難生活を行う施設」であり、「災害時に必要に応じて開設される二次的避難所」。そして「災害発生直後に利用することはできません」と明記されています。

避難の順番。1 自宅から近くの指定緊急避難場所または指定避難所へ。2 指定避難所での生活が困難と判断された場合に指定福祉避難所が開設される。3 指定福祉避難所へ移って避難生活を送る

受入対象者は「要配慮者」およびその家族。ご家族も一緒に受け入れる前提である点は、安心材料になります。

避難の一手目は、あくまで自宅の近くの指定避難所。そこまでの道のりをどう行くか。決めておくのは、まずそこです。福祉避難所の問い合わせ先は長寿福祉課(089-948-6410)。

通っている事業所の備えは、聞いてよいことです

デイサービスや訪問介護を利用していると、もうひとつ不安が出てきます。「日中、預けている時間に災害が起きたら、この人はどうなるんやろか」。聞きたいけれど、疑っているみたいで聞きにくい。がしかし、ここには制度の裏づけがあります。

国は令和6年度の介護報酬改定で、業務継続計画(BCP)未策定事業所に対する減算を導入しました。厚生労働省の資料には「感染症や災害の発生時に継続的にサービス提供できる体制を構築するため、業務継続計画が未策定の際は、基本報酬を減算する」とあり、対象は居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除く全サービスです。

つまり災害時にどう動くかを計画として持っておくことは、いま国が介護サービス全体に求めていること。だから見学のときにこう聞いても、まったく失礼になりません。

  • 災害のとき、業務継続計画ではどんな段取りになっていますか
  • 送迎の途中で災害が起きたら、どこへ向かうことになっていますか
  • 家族への連絡は、どういう順番で入りますか

答えが完璧かどうかより、聞いたときに具体的な話が出てくるかを見るとよいと思います。見学で見ておきたい点の全体像はグループホーム見学、大将が見てほしい5つの点、安全体制の見方は介護事故が不安|安全体制の見方と松山の相談先にまとめています。

松山では、どうなっているか

松山市には、家庭で使える道具も揃っています。まつやま総合防災マップは、洪水・土砂災害・津波など複数のハザード情報を1冊に集めたエリア別の防災マップで、全戸に配布されました。まず見るのは、自宅にどの災害のリスクがあるか。浸水のおそれがある地域と土砂災害のおそれがある地域とでは、避難の答えがまるで変わります。

松山防災アプリでは、マイ・タイムラインをデジタルで作れます(令和8年5月29日リニューアル)。台風が近づいてから避難するまでに「いつ・誰が・何をするか」を時系列で書き出しておくものです。介護が必要なご家族がいる場合、薬・おむつ・お薬手帳・補助具の準備が避難と同じくらい時間を食います。だからこそ書き出す値打ちがあります。

迷ったときの最初の相談先は地域包括支援センターです。介護・福祉・健康・権利のことを幅広く受ける、松山市の総合相談窓口。名簿の登録も避難計画づくりも、「どこから手をつければいいか分からない」の段階から相談できます。介護保険をこれから申請される方は松山で介護保険を申請するには?窓口と流れを、在宅を続けるか施設を考えるかで迷っておられる方は在宅介護の限界、どこで施設を考えるかをご覧ください。

まとめ

持ち帰っていただきたいのは4つ。

  1. 動く合図は警戒レベル3「高齢者等避難」。介護が必要な家族がいる家は、ここで動き出す
  2. 松山市の避難行動要支援者名簿は申し込みが必要。自動では載らない。窓口は長寿福祉課(089-948-6408)ほか
  3. 名簿と一枚になった個別避難計画で「誰が支援するか」を先に決めておく
  4. 指定福祉避難所は二次的避難所。直接は行けない。一手目は近くの指定避難所

全部を今日やる必要はありません。まず防災マップで自宅のリスクを確かめる。それだけでも十分な一歩です。不安の中身を「決まっていないこと」と「決めておけること」に分けてみると、決めておけることのほうが案外多い。夏の暑さへの備えも同じ考え方でした(高齢者の熱中症、家族が気づける5つのサイン)。

大将が現場でずっと大事にしてきたのは「快」という一文字です。快は、こちらが与えるものではありません。受け取った方の反応から生まれるもの。その人の今は、快なのか。そう考えることが、相手の立場に立つということなんやと思います。

避難の段取りを先に決めておくことも、突き詰めれば同じです。いざというときに慌てさせない。怖い思いをさせない。それは、してあげることではなくさせていただくこと。その姿勢を続けることが、大将の約束です♪

松山近郊でグループホーム・デイサービス・居宅介護をお探しでしたら、見学のご相談をどうぞ。防災の備えについてのご質問も遠慮なく。

この記事の出典

まずは、見学にお越しください。

どの施設が合うのか、費用はどれくらいか。決めていない段階のご相談で結構です。お電話でもフォームでもお受けします。

見学のご相談 →

お電話 089-993-5737